2009年8月27日木曜日

その会社、本当に実在してますか?

注)写真は本文とは関係ありません。あくまでイメージです。
久々に、日経BP社主宰のセミナーに参加していたりするときに限って、緊急の電話がかかってくるものです。
「緊急事態です!!○○社が倒産するかもって連絡があって、これから○○で関係者で話し合うっていうんで、いまうちの社長が現地に向かっているところなんでヘルプに向かって欲しいんです!!どうしよう、お金もらえなくなっちゃう。」
大概、トラブルが発生してから、経理担当している奥さんとか、№2の専務が慌てて僕に電話をかけてきます。
本当はクレジットカードつくる時みたいに、新規取引する場合には必ず信用調査をしてその後の与信管理もやるべきなんでしょうけど、中小規模の会社であるとほとんど事前の信用調査は行われていません。
本来、「転ばぬ先の杖」である信用調査は、「転んだ先の杖」のごとく危なくなってからいかに売掛金を回収するか、という相談依頼になってしまいます。
もうその時には、みなさん何から手をつけていいのかわからず、物理的にも精神的にもてんやわんやの状態になっていますが、落ち着いて相手企業の会社謄本を取ることからはじめましょう。
というのは、僕が調査依頼を受ける会社の6割が名刺やホームページ上、帝国データバンクのデータ上、本店とされている本店所在地に本店の登記が存在しません。さらに、そのうち2割が最終的に会社の登記自体が存在しなかったというケースです。
本当にその会社は実在していたんですか?本当にその担当者は実在していたんですか?
とてもシンプルすぎることが見落とされているケースがあまりにも多いです。
会社が登記されていたら、今度は現地に行ってみます。
すると本店とされている住所にその会社が存在しないケースが4割くらいあります。
また、本店とされている住所にその住所自体が存在しないケースが2割くらいあります。
信じられないかもしれませんが、会社の登記の際、本店所在地を証明する公的機関の証明書は一切不要です。公的機関の証明書としては会社代表者の印鑑証明書しか添付しませんので、会社代表者の住所だけが第三者的に証明されている証拠になります。
でも、この会社代表者の住所もいくつかテクニカルな手続きを踏んだり、そもそも印鑑証明書を偽造したり、他人名義だったり、されているケースも実際には多いです。
僕はよくクライアントに、「その○○会社や担当者の○○さんは実在しますか?」という質問をしてキョトンとされてしまうのですが、知り合った過程とか取引をはじめることになった経緯をヒアリングしていくと、いよいよ実在が怪しくなり、すぐに現地に向かってみると案の定何もなかったというケースは本当に多いです。
冒頭のケースは、調査の結果、社長として紹介されていた人は代表者ではなく(まあ、これはありといえばありですが)、会社の本店とされていた場所はすでに更地になっており(まあ、これもありといえばありです)、別の場所に引っ越していたというケースでした。
次に確認するのは、取引を証明する書類の確認です。
そして大概ここでまたつまずきます。契約書とかないんですよね・・・。
あったとしても、とても寒々しい契約書だけとか・・・。
業界の商慣習で、契約書は交わさないというところが非常に多いのですが、口約束をした相手が実在しない、実在していたけど姿を消してしまった、そういえば家族が○○にいるという話をしていたがその住所もわからない、電話は既に通じない、解約されてしまっている、などの状況下では、相手を探し出して売掛金を回収するのは非常に困難になります。
また、コトが起きてから、取引や債権を証明する証拠資料もないのに、「私が言えば2~3万円の報酬でやってくれる知り合いの弁護士(たいてい無料相談会で知り合っただけ、とか、知り合いの知り合いでほそぼそと営んでいらっしゃる方)がいるから、彼に頼んで、相手の財産を差し押さえてやる!!」と意気込んでいらっしゃる経営者も非常に多い(僕のクライアントのみなさんは優秀なのでさすがにそのような方はいらっしゃいませんが)のですが、お話を聞きながらいつも哀しい気持ちになります。
倒産会社の債権回収率はうまく回収できて3%程度というのが現実なのに、全額回収できる夢を抱いてしまっている経営者の姿は毎回とても痛々しいです。
僕はといえば、クライアントのライバル会社がそういう段階で踏みとどまっているのを尻目に、さっさと資産調査を済ませ、相手企業がいよいよ倒産するという以前の段階で債権回収や保全の措置の方策をクライアントに指示しリスクを最小限に抑える工夫をしています。
回収不能な売掛債権が発生してしまうということは、自社の資金繰りに影響して資金不足を来たし、その分の資金手当てがスムーズに受けられなければ自社も倒産しかねないこと、300万の未収金が発生することは営業利益300万円分が失われたのと同じこと、仮に粗利益率が10%であるとすれば3000万円の売上が吹き飛ばされたと同じことであることに意識の向かない経営者は非常に多い。
信じて疑わないことを美徳とすることもありはありなんですが、僕は現実主義者なので現金のほうを信用しています。悪徳かもしれませんけれど、それがクライアントを守るために必要なことですから。

2009年8月4日火曜日

経営者にとってスリル満点の1冊。

「経営者は危なくなるほどよく笑う」



僕ははじめこのタイトルの意味を勘違いしていました。



破綻を避ける良い経営者は苦しくても笑顔でいられる図太い神経でいなければならない、みたいな自己啓発本の一種だと思って購入してみたら、内容はまったく別物で愕然としました。



実際は、破綻に向うまでの経営者の心理とその兆候を「初期段階」「中期段階」「最終段階」に分けて分析している本でした。


【破綻に向かう「初期段階」】



1.取引先の悪口を言うようになる。

2.業績が落ちていくのを従業員のせいにする。

3.言い訳が多くなる。

4.金融機関を非難するようになる。

5.話のつじつまが合わない。

6.原料高騰を甘く見ている。

7.運転資金の借入回転が早くなる。

8.売上げがないのに経費を削減しない。



【破綻に向かう「中期段階」】



1.見込みと現実の区別がつかなくなる。

2.一発儲けの話にすぐに乗ってしまう。

3.統一性のない商品や資料が増える。

4.バブル期に儲けたのと同じ手段を追う。

5.家にいる時間が減る。

6.弱気な話と大きな話を交互にする。

7.未来が予測できず希望的観測にすがる。

8.カードで借り手て運転資金を捻出する。

9.客や従業員の声を聞かない。

10.知らない電話番号の携帯着信には出ない。

11.社内で携帯電話が鳴ると外へ出て話す。

12.事業所の移転を不動産屋に相談し始める。

13.急に会費が必要な付き合いを始める。

14.再生のセミナーには参加しない。

15.売掛金の回収を急ぐ。

16.借入金がランニングコストに使われている。

17.交通費など小額経費の精算に時間を要する。

18.給与の未払いがたびたび起こる。

19.仕入れの支払いサイトが延びる。

20.急に新規の仕入れ先を開拓しようとする。

21.社有車の稼働率が低い。

22.従業員に元気がなくなり職場に活気がない。

23.幹部従業員が独立または転職する。

24.手形割引のパンフレットの送付が多くなる。

25.従業員に対して異常に経費の節約をさせる。



【破綻に向かう「最終段階」】



1.明らかに寝不足がち

2.資産価値のあるものを売却する。

3.所在がはっきりしない時が増える。

4.目を見ながら話ができなくなる。

5.最近つき合いのない友だちに会いに行く。

6.お蔵入りを引き出す。

7.自分から不振を口にしなくなる。

8.人相が変わる。

9.感情の起伏が激しくなる。

10.みすぼらしい・だらしない印象を受ける。

11.強烈なマイナスのエネルギーを感じる。

12.滞りがちだった金利を期日に支払う。

13.外部への対応時に笑顔が増える。

14.子どもが長期の休みに入ってすぐ離婚する。

15.提案への回答がわけもなく延びる。

16.従業員も知らない会議が頻繁に開かれる。

17.経営陣が頻繁に入れ替わる。

18.採算を度外視して在庫の現金化を目指す。

19.トイレや車、事務所が汚くなってくる。

20.事務所の前にスーツ姿の人が待機している。

21.取立て屋らしき人が常時周辺にいる。





僕のみるところ、大半の中小企業の経営者は「中期段階」にあると思います。



商談で相手から「検討しておきます」と回答されたとき、焦っている経営者はそれを「可能性あり」と感じ、独り勝手に売上げ予測に立ててしまう、「見込みの現実化」などはきっと多くの経営者が経験があると思います。



経営は、どこまで自分の頭脳と精神をクレバーな状態で保っていられるかが勝負の世界です。



1週間に一度は、こういうチェックリストを利用して自分の頭脳と精神の状態を把握することも必要なんだと思います。



でも、貞子は出てきませんが鈴木光司の「リング」以上に怖い本ですよ。

2009年8月3日月曜日

重松清は涙腺を弱くさせる。

重松清は、新しい家族のカタチを提案してくる。

そして、僕の選択が間違っていないと後押ししてくれる。

もちろん、なにが正解でなにが誤りか、なんてことはいつになっても分からないだろうけれど、

僕が岐路に立っていた3年前の決断を補完してくれる何かをずっと探していました。


仕事や経営は、何度でもやり直すことができます。

家族は。。

ともに過ごした時間も、ともに過ごせなかった時間も、あとで取り返すことができません。

「あとから後悔しても思い出は増やせなんだ、仕事なんてどうだっていい、・・・・子どものことを覚えててやるのが親の義務だぞ、ほんとうに、・・・」

ってほんとうにそのとおりだと思います。


「結局・・・なにが残ったんだろうなあ、俺の人生・・・」

といわないために、決断したことはやっぱり正解だったんだろうなあと感じるとともに、すっかり涙腺が弱くなってしまった自分を再確認していました。

「村上春樹は人生の挫折を味わった後に読むべきだ」と誰かがいった。

高校生のころ、「ノルウェイの森」のきれいな表紙が欲しくて、初めて村上春樹を読み、当時出版されていた短編も含むすべてを読み漁っていました。
当時は、正直よく分かりませんでした。
その作者が意図するものがなんなのか、なにを言いたくて書いている本なのか。
あれからちょうど倍、生きて久しぶりに村上春樹を読んでみると、あっけないほど平易に感じられ(作品のせいかもしれませんが)拍子抜けしてしまいました。
「村上春樹は人生の挫折の味わった後に読むべきで、若いうちは片岡義男を読むべきだ」と誰かが言っていましたが、いまさらながらその指摘は正しかったように思います。
片岡義男もあのころは100冊以上本棚にあって、同じく赤い背表紙の森瑤子も相当あって、当時の本棚は真っ赤だったなあと思い出してみたりします。